本作の企画は、大学の授業で「東日本大震災をテーマにした脚本を書く」という課題が出たところからスタートした。不幸の中から幸福への糸口を見出だせるのが映画だとすれば、〈つながり〉ではなく〈断絶〉を、今こそ恐れずに描くべきではないか。そして、それは現代人が目を背けがちな「死の物語」でなくてはならない。「死の物語」には他者の孤独や不幸に寄り添う力があるからだ。こうして書き上げられた『サクリファイス』の脚本は、その後、立教大学映像身体学科の第一回スカラシップ作品に選出され、映画化された。
誰にでも愛想の良い好青年でありながら、猫の死体の写真を収集しているという複雑な内面を持つ主人公・沖田を演じるのは、『14の夜』『アイスと雨音』での演技が話題を呼んだ青木柚。「普通」を拒絶し、「境界の向こう」へ憧れを抱く女子大生・塔子役には、『花に嵐』『聖なるもの』や舞台でも活躍する半田美樹。霊能力に翻弄されながらも、大切な人との記憶を武器に走り続ける少女・翠役には、これが映画初出演となる五味未知子が挑んだ。脇を固める三坂知絵子、草野康太、三浦貴大ら実力派俳優たちの芝居も見所の一つである。
ラスト三十分、生者と死者の境界が取り払われ、物語そのものが「壊れる」時、寄る辺なき若者たちはどのような生き方を選択するのだろうか。是非、あなたの目で目撃して欲しい。
物語
かつて新興宗教団体〈汐の会〉で東日本大震災を予知した少女・翠は、今は陸上部に所属する女子大生としての日々を過ごしていた。
同じ頃、大学周辺では三つの事件が起こっていた。神崎ソラという孤独な学生の死。三一一匹殺されるまで終わらないとされる猫殺し。若者を戦争へ駆り立てる団体〈しんわ〉の暗躍。
平凡な毎日を忌み嫌う塔子は、同じ学部に通う愛想の良い青年・沖田が猫殺しの犯人ではないかと睨み行動を共にしていた。やがて彼が、キャンパス内で神崎ソラと接触を持っていた唯一の人物であることを知り、猫殺しだけでなくソラの殺害にも関与しているのではと疑い始めるが……。
東日本大震災から九年、「死の物語」の中を若者たちが疾走する。
コメント
キャスト
2001年生まれ、神奈川県出身。 主な出演作に、映画『14の夜』(16年/足立紳監督)、『アイスと雨音』(18年/松居大悟監督)、『コーヒーが冷めないうちに』(18年/塚原あゆ子監督)、『教誨師』(18年/佐向大監督)、『アンダー・ユア・ベッド』(19年/安里麻里監督)、『暁闇』(19年/阿部はりか監督)、短編映画「またね」(19年/松本花奈監督)など。 今泉力哉と玉田企画「街の下で」(19年)で初舞台を経験し、YouTubeドラマ「主人公」が現在配信中。
京都出身。映画『花に嵐』『聖なるもの』(岩切一空監督)や、ピンク・リバティ、マームとジプシー、バストリオなど、数多くの舞台にも出演。
1999.01.20
ミスiD2018受賞。
今作『サクリファイス』にて映画デビュー。
誰かの生きるための理由になるため、モデルや女優などジャンル問わず活動している。
福島県出身。明治大学在学中、留学先であったカナダのトロントにて、俳優活動を開始。帰国後もインディーズ映画を中心に活動していたが、18年より財団江本純子の『事務王1』や、艶∞ポリス『PARTY PEOPLE』、江本純子の行動作品『渇望』などの演劇作品にも参加。映像作品は『verse1』『PAULINE』『愛の茶番』など。
1991年3月14日生まれ。静岡県静岡市出身。
2012年、NTVドラマ「Piece」で本格的に俳優デビューし、テレビドラマを中心に出演する。2017年からは映画を中心に活動しており、現在主演含め多数出演映画が劇場公開待機中。
▼主な出演作
磯部鉄平監督「ミは未来のミ」主演:上村拓也 役
森田和樹監督「されど青春の端くれ」枝野哲夫 役
武井佑吏監督「赤色彗星倶楽部」吉安 役
西川達郎監督「触れたつもりで」原理一 役
平成元年、山梨県出身。
日本映画学校(現:日本映画大学)俳優科を卒業後、舞台、インディペンデント映画を中心に活動を行う。
1997年生まれ。静岡出身。
2017年映像制作ユニットRecolte &Co.に加入。サクリファイスで初出演、スタッフも兼ねた。
山口県出身。早稲田大学にて演劇学を、東京大学大学院にてメディア環境学を修める。1999年、月蝕歌劇団公演『少女革命ウテナ』に出演。以降、同劇団の公演を中心に、遊園地再生事業団、流山児★事務所、ニブロールなど、様々な舞台でジャンルを超えて活躍。また2000年には、映画『VERSUS』(北村龍平監督)のヒロイン役に抜擢され、邦画デビュー。独特の存在感で注目を集め、近年も『脱脱脱脱17』(松本花奈監督)、『一人の息子』(谷健二監督)、『アストラル・アブノーマル鈴木さん』(大野大輔監督)など出演作品多数。
1975年横浜市生まれ。
1986年TVドラマ「大人になるまでガマンする」で子役デビュー後、映画、ドラマ、舞台、CM他多岐に渡って出演。
監督の壷井濯とは、2010年の舞台「スタニスラフスキー探偵団」にて共演。
後に映画化された「貌斬りKAOKIRI」2016年 監督 細野辰興では主演。
近年では、「D坂の殺人事件」「屋根裏の散歩者」などて明智小五郎を演じている。
出演最新作に岩波ホールでの公開が決まっている「モルエラニの霧の中」監督 坪川拓史 がある。
同作では七章からなるオムニバスの中の一編に主演している他、スタッフとしても参加している。
1985年11月10日生まれ、東京都出身。 『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(10/錦織良成監督)で俳優デビュー。 近年の主な出演作に、『ローリング』(15/冨永昌敬監督)、『マンガ肉と僕』(16/杉野希妃監督)、『四月の永い夢』(18/中川龍太郎監督)、『栞』(18/榊原有佑監督)、『空の瞳とカタツムリ』(19/斎藤久志監督)、『ダンスウィズミー』(19/矢口史靖監督)、テレビ東京「ひとりキャンプで食って寝る」など多数。今後の待機作に『ゴーストマスター』(12月6日公開/ヤングポール監督)、『初恋』(20年2月28日公開/三池崇史監督)、『大綱引きの恋』(21年公開予定/佐々部清監督)、『大コメ騒動』(21年公開予定/本木克英監督)などがある。
スタッフ
東京都出身。日本映画学校(現日本映画大学)卒業後、立教大学現代心理学部映像身体学科に入学。在学中より、篠崎誠監督『SHARING』(14)、『共想』(18)や黒沢清監督『岸辺の旅』(15)にスタッフとして参加。本作は第一回立教大学映像身体学科スカラシップ作品として選出され、これが長編初監督となった。
静岡県出身。日本映画学校(現日本映画大学)俳優科卒業後、役者としての活動の他、撮影監督やメイキングカメラマンとしても活動中。近年の主な出演作に『They Survive』『共想』(篠崎誠監督) 、メイキング撮影では『五億円のじんせい』(文晟豪監督) 、テレビ東京『フルーツ宅配便』、『子供はわかってあげない』(沖田修一監督)などがある。本作が撮影監督として初の長編作品。
劇場情報
2020年3月6日(金)よりアップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー
公開情報は随時更新していきます。
都道府県 | 劇場名 | 公開日 | 備考 |
---|---|---|---|
東京 | アップリンク渋谷(HP) | 2021年1月3日(日)・5日(火)・7日(木) | 上映終了 |
広島 | 横川シネマ(HP) | 2020年12月22日(火)〜12月27日(日) | 上映終了 |
石川 | シネモンド(HP) | 2020年12月19日(土)〜12月25日(金) | 上映終了 |
兵庫 | 神戸映画資料館(HP) | 2020年12月11日(金)〜12月15日(火) | 上映終了 |
長野 | 松本CINEMAセレクト(HP) | 2020年10月31日(土)19:30〜 | 上映終了 |
大阪 | シネ・ヌーヴォ(HP) | 2020年8月22日(土)〜 | 上映終了 |
京都 | 出町座(HP) | 2020年8月21日(金)〜 | 上映終了 |
神奈川 | 横浜シネマリン(HP) | 2020年6月27日(土)〜 | 上映終了 |
名古屋 | 名古屋シネマテーク(HP) | 2020年6月29日(月)〜 7月1日(水) | 上映終了 |
東京 | アップリンク吉祥寺(HP) | 2020年3月6日(金)〜 | 上映終了 |
クレジット
『サクリファイス』
青木柚 半田美樹 五味未知子 藤田晃輔 櫻井保幸 矢﨑初音 下村花
柗下仁美 青木陽南 田港璃空/三坂知絵子/草野康太/三浦貴大
監督・脚本・編集:壷井濯
プロデューサー:藤原里歩 副プロデューサー:柗下仁美、林海斗
撮影:柗下仁美 録音:藤原里歩 撮影助手:柳田智哉 助監督:加登谷美琴 制作:下村花
音楽:大津沙良 整音:塚本啓介 スチール:柗下知之
主題歌:ぐみ(from パスワードの人)「小譚歌」
制作・配給: Récolte&Co. 配給協力:林海斗 宣伝:髭野純 宣伝デザイン:寺澤圭太郎 webデザイン:秋山祐
2019年/日本/カラー/16:9/77分/ステレオ/デジタル